ウィメンズデザイナーがWILD THINGSを選ぶ理由
by JUN MIKAMI
ワイルドシングスとのコラボは
願ってもない機会だった
――2020年の秋冬シーズンに、初めてコラボレーションさせていただきました。聞けば、コラボ前からバックパックを作りたいとお考えだったんですよね?
「そうですね。バックパックって便利そうで、いいなと思っていて。ただ自分でもあまり使ったことがなかったですし、自力で作るノウハウもなくてどうしようかと考えていました。そこでワイルドシングスさんが、ウィメンズブランドと新しいコラボレーションアイテムを作りたいと、ジュン ミカミを指名してくれて。ワイルドシングスさんならもしかするとバックパックを作れるかも、願ってもない機会だなと、コラボさせていただくことになりました」
――でもジュン ミカミとしてはバックパックって意外性がありますよね?
「そうなんです。あとジュン ミカミの服にバックパックでしっくりくるモノって、あまりないじゃないですか?(笑) だから自分のところで作ってみたいなと考えていました」
――なるほど。ジュン ミカミでは初めてのコラボレーションだったんですよね?
「はい。初めてのことで、どうなるんだろうと思っていましたが、縛りも全然なく、いつものようにデザインさせていただきました。ただワイルドシングスさんから、『こういうところに絞れるディテールやギミックを加えると、ワイルドシングスらしいアクティブな感じが出てくるよ』というアドバイスやノウハウを頂けて、なるほどと感心しながら仕事をすることができました」
――三上さんは普段、アウトドアブランドのアイテムを使うことはあるんですか?
「いえ、そんなに取り入れたことはないですね。ただ主人のワードローブに年々、アウトドアブランドのものが増えていて、見ていると軽くて温かそうだし、いいなと思うようになっていました。軽くて温かい着心地のいい服って、アウトドア以外のブランドになると、高額になるじゃないですか? でもアウトドアブランドはコストパフォーマンスに優れていて、快適で機能的。最近はデザインも昔と違って、ストレートにアウトドアっぽいものだけじゃないし、すごい興味深いなと思ってたんです」
――そして2021年秋冬の第2弾では「ダウンを作りましょう」というお話になりました。
「ジュン ミカミでもダウンウェアはあったのですが、衿なしのVネックになっていたり、温かさという意味ではちょっと不思議なものです(笑)。だからちゃんと温かいダウンを作ってみたいなと。温かさを踏まえたうえで、私らしさのあるダウンを作ってみたいと思いました」
コラボ第2弾は、さまざまな
着方が楽しめるダウンアイテム
――今回のコラボレーションはダウンを使ったジャケット、パンツ、グローブを作りました。いずれもジュン ミカミらしい魅力に溢れていますよね。例えばダウンジャケット一着で何通りもの着方ができたり。
「いろいろな着方ができるのは、ジュン ミカミでもよくある手法、デザインですね。ダウンジャケットはウエストのドローコードを絞ってシェイプを加えるだけでも、AラインからXラインへと、だいぶ雰囲気を変えられます。1サイズ展開なのですが、ドローコードで絞りを入れたりすることで、小柄な人でもバランスが取りやすくなったり、いろんな体系の人が似合うように作りました。クラシカルなミリタリーっぽいテイストも、ジュン ミカミでよく取り入れているものですね。フライトジャケットのような分割式のフードも着脱が可能です。フロントから続く衿も試行錯誤したデザインです」
――多彩なポケットワークも特徴的ですよね?
「そうですね。ウエストの大ぶりなポケットは、デザインとしてのアクセントになったり、ミリタリー、アウトドアなエッセンスも感じられそうです。背中のゲームポケットモチーフは、前回のコートにも使っていて、ワイルドシングスさんと『共通項があると、シリーズの記号みたいな役割を果たしていいね』といった話にもなりました」
――シェルのナイロンは、ギアとしてのダウンにはあまり見られない、都会的な質感です。
「ナイロンにも結構凝っていて、このくらいの長丈のウィメンズダウンで、光沢のあるナイロンを使うと、ミセス感が出てくるんです。だからテカテカしてないマットな質感を選びました」
――カラーのネイビーは、ブラックとの2トーンカラーになっていて、こちらもおもしろいですね。
「バイカラーでもネイビー×ブラックのダークトーンなら取り入れやすさもあるし、キルティングの切り替えなどもメリハリが効いて、デザインとしても活きてくると思います」
――袖が着脱可能で、袖なしのコーディネートも素敵です。
「レイヤードにも活かせるし、アームの付いたグローブとの着こなしもおもしろいと思いました」
あまりダウンを着なかった人にも
取り入れやすく、新鮮なダウンになれたら嬉しい
――ジュン ミカミのホームページのトップに、コラボのダウンパンツとフィッシャーマンニットによるスタイルがありますが、ダウンパンツはああいったアウトライン、イメージがあって作られたのですか?
「はい、ありました」
――なるほど。ハイウエストだったりと、時代感も感じられますよね。
「そうですね。シルエットに丸みをもたせたり、裾は細くテーパードさせたりしています。あとは単純に、ダウンパンツを私も穿きたい、という思いがありました(笑)。メンズは最近、ダウンパンツが増えてるじゃないですか? 温かそうで羨ましいなって。女性ものはあまり多くないし、他の女性から『穿きたいけど、太って見えやすいのがイヤ』という声も聞いていたので、じゃあジュン ミカミの服にも違和感なく合わせられるようなものを作ろうと。パンツもファスナーの開閉によってサイズ調節できたり、シルエットをアレンジできるようにしています。ファスナーを開くと、メンズのコーディネートにも合わせやすいと思いますよ」
――グローブにもいろいろな工夫が施されてますね。
「スマホを使いたいので、指先に切れ込みを入れたりしていますね。あとグローブを外して、折り返すとアームにボタンで留められるようになっています。するとグローブを脱がずにお買い物できる。これだけボリュームのあるグローブを、ポケットにしまうのってうっとうしいですからね。ワイルドシングスらしい機能性も感じていただけそうです」
――昨年に続いて、第2弾のコラボも発売から大好評となっています。最後にそうした反響についての感想を教えていただけますか?
「素直に嬉しいですね。ちなみにジュン ミカミのユーザー、お客さんって、あまりダウンを取り入れない方が多いんですが、『うまく合わせられた』という声も聞けて、よかったですね。初めてダウンを買ったという方もいて、当初は着こなせるか心配していたそうなんですが、それほど深く考えずに合わせられたとも聞きました。今までお持ちだったアウターから、違和感なくスイッチできて、なおかつ新鮮な印象で着られる。パンツとグローブも含めて、そうしたダウンアイテムになっていただけたら嬉しいですね」
Profile
JUN MIKAMI デザイナー/三上 純
文化服装学院を経て大塚テキスタイルデザイン専門学校を修了後、アパレルメーカーにてデザイナーを経験。その後、フリーランスとして他社ブランドへデザイン提供を行うと共に、糸の染色からデザイン、ニット制作に渡る幅広い知識をいかしハンドニットのセミオーダー受注を開始する。2012年SSよりJUN MIKAMIを始動。